絶滅危惧植物

 

 徳島県植物誌によると,徳島県には3166種類もの維管束植物(種子植物とシダ植物)が生育しています.徳島県で作成したレッドデータブック(県版RDB)には,準絶滅危惧や情報不足を含め814種類の植物が絶滅の危機に瀕している植物としてリストアップされています.徳島県では約26パーセントの植物,すなわち4種類に1種類の割合で絶滅の危機に瀕していることになります.これは高い割合なのでしょうか?たとえば,環境省(旧環境庁)のレッドデータブック(環境省版RDB)では,我が国の植物7000種類のうち1887種類が絶滅の危機に瀕しており,約27%になります.隣の香川県では,1726種類のうち401種類で,約23%の植物が絶滅の危機に瀕しています.特に徳島県がずば抜けて絶滅危惧植物の割合が多いというわけではなさそうです.

 下の図は県版RDBに掲載された維管束植物の地域(市町村)ごとの数を示したものです.剣山については市町村をまたがっていますので,一つの地域として扱っています.生育が確認できたものと過去には記録があるが絶滅したか現状では確認されていないものに分けて示しました。また,円の大きさはそれらの合計を示しています.地域によってかなりのばらつきがあり、総数では木沢村の207種類が最も多く、吉野町の5種類が最も少なくなっています。また、生育が確認できた割合では相生町や日和佐町などでは8割を越えますが、鴨島町では1割にも達していません.今後の調査が進むにつれて生息が確認された種類数が増えることが望まれます.

 

県版RDBに掲載された維管束植物の地域ごとの数

 もう少し細かくデータを見てみると,県立博物館に収蔵されているものや徳島県植物誌などの文献に記録されている絶滅危惧種を経緯度2分あたりのメッシュごとに算定したものが下の図です.剣山や石立山などの標高の高い地域が多くなっていることがわかります.これは亜高山という独特の環境の中で固有種や分布が限定されている種が多いためです.

 レッドデータブックを作成してはっきりしたことは,最初から分布が限られていたものも少なくなっていますが,昔は普通にあったものが減っているということです.たとえば,秋の七草のうちフジバカマ,キキョウ,オミナエシの3種が絶滅危惧種となっています.また,稲作に関連して生育していた植物も減っています.

 徳島県では維管束植物についてはある程度の情報が集まっていますが,それ以外のコケや藻類については研究者がいないなどのためほとんど情報が集まっておらず,県版のレッドデータブックも作成されていませんので,今後の課題となっています.

 ここでは,徳島県のものを中心に県外のものも含めて,おもな絶滅危惧植物を紹介します.なお,ラン科などのように採集による絶滅の危険性が高いものについてはあえて紹介していな場合もありますので,その点をご了承ください.


徳島県の絶滅危惧種の実情

絶滅の危機に瀕している水辺の植物

ワタヨモギ −標本の大切さ−

タコノアシ

スズカケソウ

イヌノフグリ −増える絶滅危惧種の謎

キクタニギク −遺伝的な攪乱が起こっている?

ウラギク

ビロードテンツキ

ヒゼンマユミ

その他,アサザやアゼオトギリなど高解像度画像で紹介してます.


野生生物を絶滅から救う営み

なぜ,生きものを絶滅から守らなければならないのか?

フジバカマ−保全のためのネットワークの大切さ

アゼオトギリ−公共工事にともなう生物調査のあり方を教えてくれた


植物の保護,生育環境の保全に関するページ

「どうやって守っていくの? 何をすれば良いの?」について考えてみよう.

フジバカマ(環境省:絶滅危惧II類,徳島県:絶滅危惧I類)

オミナエシ(徳島県:絶滅危惧I類)

 

キキョウ(環境省:絶滅危惧II類,徳島県:絶滅危惧II類)


参考文献
阿部近一 1990. 徳島県植物誌. 教育出版センター.
岩槻邦男編 1992. 滅び行く日本の植物50種.築地書館.
環境庁編 2000. 改訂・日本の絶滅のおそれのある野生生物−レッドデータブック−8 植物I(維管束植物).自然環境研究センター,東京.
加藤辰己・太田英利 1993. 日本の絶滅危惧生物.保育社.
中田政司・関太郎・伊藤隆之・小川 誠・松岸得之介・熊谷昭彦・工藤 信 1995. 最近道路の法面に発見されるキクタニギクとイワギクについて.植物地理・分類研究、43(1-2):124-126.
小川誠 2002. Culture Club 絶滅から植物を救うために。徳島県立博物館ニュース、(49):2-3.
小川誠 2003. Q&A 秋の七草が減っているのは本当ですか?。徳島県立博物館ニュース、(53):7.
小川誠 2004. 速報 アゼオトギリの群落発見。徳島県立博物館ニュース、(57):5.
種生物学会編 2002. 保全と復元の生物学.文一総合出版.
Tanaka, R. 1959. On the speciation and karyotypes in diploid and tetraploid species of Chrysanthemum I. Karyotypes in Chrysanthemum boreale (2n=18). J. Sci. Hiroshima Univ. Ser. B, Div. 2, 9: 1-16.
Tanaka, R. 1960. On the speciation and karyotypes in diploid and tetraploid species of Chrysanthemum V. Karyotypes in Chrysanthemum yoshinagantum (2n=36). Cytologia 25:43-58.
徳島県版レッドデータブック掲載種検討委員会編 2001. 徳島県の絶滅のおそれのある野生生物−徳島県版レッドデータブック−.徳島県.
我が国における保護上重要な植物種および植物群落に関する研究委員会種分科会編 1996. 植物群落レッドデータ・ブック.(財)日本自然保護協会・(財)世界自然保護基金日本委員会.
矢原徹一編 2003. ヤマケイ情報箱―レッドデータプランツ.山と渓谷社.


参考リンク

花の散歩道

徳島県版レッドデータブックに掲載された維管束植物の一覧

徳島県版レッドデータブックの全文(県庁のページ)

 


このページに関するお問い合わせは作成者:小川 誠(徳島県立博物館)

[小川誠のページ]